日本酒でよく耳にする「生酛(きもと)」について皆様ご存じでしょうか?
「生酛造り」について図を用いてわかりやすく解説いたします!
- そもそも生酛造りとは?
- 生酛造りとそうじゃない日本酒の違いとは?
- 生酛造りだとどんな味わいになりやすいの?
生酛(きもと)とは「酛(もと)=酒母(しゅぼ)」の一種です。
酛とは何か簡単に説明いたしますと「酵母を増やす段階」です。
その酛造りにも様々な種類がございます。代表的な酛造りについても軽くご紹介いたします。
速醸造り | 現代の主流な造り方で人工の乳酸を使用する造り方 |
生酛造り | 明治中期までは主流だった造り方で自然の乳酸菌から乳酸を得る造り方 |
山廃造り | 生酛造りの亜種 |
水酛(菩提酛) | 古くは室町時代から記録がある特殊な造り方 |
山廃造り・水酛(菩提酛)に関しましてはまた後日説明しようと思います。
今回は現代の主流・速醸造りと昔の主流・生酛造りの違いを中心に説明いたします!
先に話しました造り方の説明を見るとわかりますように速醸造りと生酛造りの大きな違いは
「人工の乳酸」を使用するか「天然の乳酸」を使用するかの違いです。
何のために乳酸が必要になるのかといいますと、「酛=酒母」にて雑菌を増やさないためです。
もし、酒母造りを乳酸菌なしで行うと炊きあがったお米の中にお酒造りに悪影響を与える雑菌が多く取り込まれてしまい、酵母にとっては住みにくい環境になってしまいます。
ですが、取り込まれてしまう雑菌は周りの環境が酸性になると途端に元気をなくし、増えにくくなります。
その一方で、酵母は周りの環境が酸性でも生き残れます。なので、酒母を酸性にするために乳酸が必要なんです!
速醸酛では、人工の乳酸を添加するのに対し、生酛造りでは酒母造りの最初に乳酸菌が生育し、十分な乳酸を得ます。
その後、酵母を酒母に投入し、酵母の数を増やしていくという風な流れになります。
そのため、速醸造りに比べて生酛造りはかなりの時間がかかります。
さらに生酛造りの場合は、酒母造りに使うお米をあらかじめすりつぶしておく「山卸(やまおろし)」という超・重労働があります。
つまり、簡単にまとめますと速醸造りよりも時間と手間をかけて造られている造り方が“生酛造り”ということなのです。
この時間と手間をかけることにより、生酛独特の味わいがでるといわれています。
一言で生酛造りの味わいを表すと「コクが深い」です。
上で説明したように生酛では自然の乳酸菌が取り込まれます。そのため、速醸酛とは違い、乳酸菌の持つ成分が酒母内にも存在しております。この成分によってコクの深さが生まれるとされています。
これより先は化学的な話を少しいたします。
お酒の「コクの深さ」に影響を及ぼしているとされているのが、“D-アミノ酸”と呼ばれる成分です。様々な種類があるこの“D-アミノ酸”ですが、そのうち、D-アラニン・D-アスパラギン酸・D-グルタミン酸が最もコクに影響するとされており、速醸酛に比べて2~10倍の量が清酒中に含まれているとされています。それくらいコクが深くなりやすいということです。
最後に余談なのですが、D‐アスパラギン酸にはコラーゲンへ作用し、若々しい肌のハリ・弾力を維持させる作用があることを資生堂さんが発表しています。
お肌を気にしている方はこれを機に生酛のお酒を飲んでみてはいかがでしょうか?(ただし、飲みすぎると逆に悪影響になるかもしれません…)
いかがでしたでしょうか?
生酛造りについて少しでもご理解いただけたのなら幸いです。
以下に参考にしたサイト等のリンクを貼っておきますので、そちらも参考にしてくださいませ。
●生酛の乳酸菌叢と生酛造りの品質特性
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan/108/6/108_382/_pdf)●生酛、乳酸菌添加生酛、速醸酛造りの日本酒醸造工程中のD‐アミノ酸の定量的解析
(http://www.jtnrs.com/sym29/01-No-O-02.pdf)●世界初、D-アスパラギン酸にコラーゲン線維束形成を促進する効果を発見
(https://corp.shiseido.com/jp/releimg/2483-j.pdf)